読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Ai_Tkgk's Soliloquy

音楽やカルチャーについて、気になることを気ままに書いています。

Record Store Day 2015の話

考察・コラム

※2回に分ける予定でしたが1エントリーにまとめました

結構日が経ってしまいましたが、4月18日(土)はRecord Store Day 2015(以下、RSD)でした。僕自身、13年末にレコードプレイヤーを手に入れて以来、フィジカル音源の購入は専らアナログばかりになっているため、RSD当日もとても楽しむことができました。

今回は、昨年のRSD2014レポ(vol.1vol.2)に引き続き、今年のRSD2015について僕なりに感想をまとめてみたいと思います。

▪︎そもそもRECORD STORE DAYとは

RECORD STORE DAYとは、配信やECサイト、ディスカウントストアの出現によって身近な街の小さなMUSIC SHOPがなくなりつつある現状に対して、RECORD STOREのオーナーであったChirs Brownが発案したもので「レコードショップに出向き、レコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する」年に一度の祭典です。2008年4月19日にサンフランシスコのラスプーチン・ミュージックでMetallicaがオフィシャルにキックオフ。以降、毎年4月の第3土曜日に開催されており、現在ではアメリカをはじめ世界21カ国で数百を数える独立資本のレコードショップが参加を表明しています。数多くのアーティストが一体となり、貴重な限定アナログレコードやグッズなどのリリースを行っているほか、世界各地でイベントが開催されています。
 - RECORD STORE DAY JAPANのHPより一部抜粋

太字にした部分が最も端的な説明かと思いますが、要するに「街の小さなレコード屋に足を運ぶ人を増やし、レコードショップの面白さを体感してもらうためのイベント」がRSDです。また、RSD当日を盛り上げるためのアンバサダー(大使)にビッグアーティストが就任することも毎年の話題となっており、本国アメリカではMetallicaIggy Pop、Jack White等豪華な顔ぶれがアンバサダーを務め、RSDを盛り上げてきました(2015年はFoo Fightersのフロントマン・Dave Grohl)。
日本ではアメリカよりも4年遅れて2012年にスタートし、今年で4年目を迎えました。アンバサダー制度は昨年から導入され、記念すべきアンバサダー第一号はレコード好きとしても知られているASIAN KUNG-FU GENERATIONGotch氏が、第二号となる今年はTHE BAWDIESROY君が就任しています(昨年、僕は「2015年のアンバサダーはサカナクションの山口一郎」と予想しましたが見事に外しました 笑)

▪︎僕のRSD2015

<購入リスト> ※アーティスト名「タイトル」
①ROTH BART BARRON「Chocolate Demo」
②SHORTSTRAW / SAWAGI「OMG / Fuss uppers」
③マイミーンズ「君のマインズ」
tofubeats「lost decade PVC」
⑤The Pen Friend Club「I Like you」
⑥KONCOS / Special Favorite Music「きつねのくに / Summer serve」
⑦Noshow「All Goes Well」
⑧PUNPEE ft.Sugbabe「Last Dance(We Are TANAKA)
Foo Fighters「songs FROM THE LAUNDRY ROOM」

昨年は10枚購入しているので1枚少ないですね。洋楽はFoo Fightersのみ購入しました。ちなみに狙っていたけど手に入れられなかったのは「Ryuichi Sakamoto + U-zhaan」でした(全く見かけませんでしたよ、これ)。当日回ったお店は以下の通りです。

<新宿>
TOWER RECORDS新宿店 ②DISK UNION新宿PUNK MARKET
<下北沢>
①DISK UNION下北沢店 ②JET SET下北沢店
<渋谷〜原宿>
TOWER RECORDS渋谷店 HMV record shop 渋谷 ③岩盤④BIG LOVE

昨年よりも訪問店舗数が減りました(11店舗→8店舗)。昨年は足を伸ばした秋葉原には行かず、新たなお店としてはHMV record shopが増えた感じです(ちなみにHMV record shopは限定レコードの圧倒的な品揃えに加え、一部中古品の50%OFFセールを行っており、さすがレコード専門店という感じでした)。理由を考えてみると、昨年よりも割と欲しかったレコードが容易に手に入ったことが大きいかと思います。昨年とほぼ同じ、午後から動き始めたにも関わらず、売り切れで手に入らないみたいなことはほとんどありませんでしたし、買わなかったものでも店頭に並んでいるのを沢山見かけました。これはおそらく、各レーベルが昨年のRSDよりも今年は力を入れており、プレス数を増やしていたのではないかな、と読んでいます(実際、あるレーベルの友人は「今年はプレス数が多くてプレス工場がパンク気味みたいな話をしていました)。

▪︎RSD2015の盛り上がりはどうだった?

感覚値で言えば、昨年よりも盛り上がっていたと思いますが、まずはデータをいくつか見てみたいと思います。

①参加店舗数
RSD2014:約100店舗 → RSD2015:158店舗 RSD JAPAN HP参考
全国的に見て約60店舗増えています。RSD参加はRSD事務局に店舗側から申請をするという流れ(その後に事務局側で審査を行っているかは不明)を考えると、RSD自体の認知度・注目度が高まっていること、そして事務局の広報活動の効果が上がっていると言えるのかもしれません。
一方で、店舗数だけでなく店舗名まで見てみると、今回の参加数店舗数増に寄与しているのがTOWER RECORDS(以下、タワー)であることが分かります。2014年は各地の大型店舗のみの参加だったタワーですが、今年はほぼ全店で参加していることが分かります(参加店舗がタワーのみという県も複数見受けられる)。タワーの全面参加によってRSDは拡大したと見ることもできるわけですが、単純に喜んでいていいのかという疑問も感じていたりもします(後述)。

②リリース数
RSD2014:44タイトル → RSD2015:69タイトル 
RSD JAPAN HP参考 
あくまで国内リリースのみの比較ですが、2014に比べて15タイトル増えています。若手アーティストのリリースやHMVがリリースした過去作品のリヴァイナル化などがリリース数が伸びた理由の1つかもしれません。また、上記69タイトルはRSD事務局が公認マークを出しているタイトル数ですが、公認マークなしでレコード屋独自のタイトルを少数ながらリリースしているところもあるため、実際にはもう少し多くなるのはないかと思います。

①②の数字から考えると、RSDは2014年に比べ確実の盛り上がりが増しているのではないでしょうか。
また、当日、各レコード屋のRSD取り上げ方も昨年以上のものがありました。例えばタワー渋谷店は入り口入ってすぐのところに大きくRSD商品を並べたブースを展開したうえでブース中心にDJ卓を設置しイベントを行っていましたし(各階でもイベントやっていたようです)、タワー新宿も邦楽・洋楽各フロアのエレベーター前にRSDエリアを展開していました。HMV record shopでは店舗奥に設置したイベントエリアでDJやトークイベントが行われ、入り口前にはRSD作品エリア、その横も中古レコードのセールコーナーとなり店舗内がRSD一色になっていました。
極め付けはテレビの撮影クルーを多数見かけたことです。昨年はほぼ見かけた記憶がないのですが、少なくても今年は日テレ、フジテレビのクルーを見かけました(日テレではNEWS ZERO内でRSD特集が放送され、友達がインタビューを受けていました 笑)。世界的に起きつつあるレコードブームは、「なぜこの時代にわざわざ不便なレコードなのか?」という疑問も相まって、カルチャー的にもビジネス的にも注目されつつあるとピックであり、そういった状況下でやってきたRSDはテレビ的に見ても注目すべきネタだったのかもしれません。

こう見ると数字的に見ても状況的に見ても、RSDはますます盛り上がりを見せてきていると言っても良いのかもしれません。実際、昨年に比べて幅広い世代の人がレコードをディグっている姿を見かけましたし、各店舗で大きく展開されるレコードコーナー、街中でレコードサイズの袋を持って歩く人々の姿を見てレコードに興味を持った人もいたのではないでしょうか(レコードを持って原宿で信号待ちをしている時に、大学生くらいのカップルに「今日レコード持ってる人いっぱい見るんですけど、何かあるんですか?」って話しかけられました)。盛り上がりを見せつつあるRSDですが、一方で昨年に引き続き、いくつかの課題や今後への期待点のようなものも感じました。

■RSD2014で感じた課題は2015でどう変わっていたか

僕は、昨年のRSDレポ内で「RSD2015に向けて」としてRSD2014に参加して感じた課題を3つ書きました。
①RSD限定商品の通販問題
②RSD海外限定商品の充実
③RSD参加店舗の充実
これらについて、RSD2015ではどのような変化があったのかを考えてみたいと思います。

①RSD限定商品の通販問題
RSD限定商品は開催趣旨の観点から「当日から1週間後から通販可(商品によっては2週間後」というルール(※当時 2015では2週間後に統一されたようです)が設けられています。しかしながら昨年、一部店舗や通販サイト限定商品の予約が行われており、しかもその商品がアンバサダーであったGotchの作品であったことから議論が巻き起こりました(詳細はVo.ゴッチの日記)。
一方、今年は現時点(5月1日)でこのような問題は発生していないようようです。これは昨年の反省を踏まえ、事務局ならびに各レコード会社がRSDのルール遵守の徹底を呼び掛けた結果なのではないかと思います(以下はBIG LOVE店長のツイート)


こういった働きかけのおかげで、当日レコード屋にみんなが足を運ぶという光景が実現できたのではないでしょうか。

②RSD海外限定商品の充実

昨年に比べ、RSD当日に店頭で海外限定レコードを多く見かけました。勿論、海外では当日に数百タイトルがリリースされているので取り揃えでいけばその数%程度なのかもしれませんが、それでも昨年に比べて多くのタイトルを目にすることができました(狙ってたポール・マッカートニーは見つけられず。。。)。Twitter上で検索するとRSD当日に海外限定レコードを手に入れている人も多く見受けられます。比較的タイトなスケジュールの中、海外限定品を輸入し、海外での発売日と同日に店頭に並べるということは、かなり前から動く必要があり、各店舗共に骨が折れることもあったのではないかと推察されます。ただ、RSD当日に海外限定品が多く並ぶことで洋楽ファンも取り込むことができるようになり、RSD参加者の裾野が広がるという効果が出るのではないでしょうか。
一方で、海外限定品を多種かつ多数見かけたのはHMV record shopとタワーだったことを考えると、大手チェーン店だからこそ実現できたのでは?という問いが生まれてきます。昨年、あるレコ屋の店員に「海外限定品は海外のディストロやレコード屋と個人的にパイプを持ってるレコード屋やバイヤーのみがそのつてを使って仕入れを行っている。これが腕の見せ所。」との話を聞きました。ただ、仮に大手チェーンの規模の利益で海外限定品の充実が図られているとしたら、こういった面白みみたいなものとは距離を感じずにはいられません。この「RSDにおける大手チェーンと個人レコード屋」みたいな話は最後に触れてみます。

③RSD参加店舗の充実

上記で触れているように2014年に比べ約60店舗増え、36都道府県で参加店舗があるというデータから見ると数で見る充実は増えています。一方で、上記でも触れたとおりタワー1店舗のみが参加という県も少なくなく、独特の色をもった個人経営のレコ屋が様々参加するという意味での参加店舗の充実は相変わらず図られていません。

昨年末、参加をしている音楽だいすきクラブでRSDに関する話題になった時、「RSDはあくまでも都市圏のみで盛り上がっている現象で地方では置いてきぼり感がある」という感想がいくつか出たのですが、1県に参加店舗が1店舗のみという現状の場合、居住地によっては参加したくてもできない状況になるわけであって、国内全域で盛り上がるRSDというにはまだまだ先は長いな、という感覚です。

地方にも大小合わせて様々なレコード屋が少なからずあるはずで(ゼロではないはず)、彼らが多く参加し、RSD当日の地域格差が出来る限り小さくなる状況を実現する為になにをすべきなのか、これは今後も事務局のみならず参加する僕らも含め、みんなで考えていかなければならないことなんだろうなぁ、と思います。

と、昨年感じた課題を中心に今年の状況を簡単に振り返ってみましたが、この3つを通して僕が感じていることは以下の通りです。

■日本のRSDは本来の趣旨を実現できているのか

冒頭に触れたとおり、RSDの趣旨は街の小さなレコード屋に足を運ぶ人を増やし、レコードショップの面白さを体感してもらうこと」にあります。その日に限定レコードがリリースされることも、一定期間は通販が禁止されていたり限定レコードの事前予約が認められないことも全ては元気のなくなりつつあるレコード屋に直接足を運んでもらうことの実現のためです。RSDを始めようと思い立った人達が盛り上げようと思っていたのは全国に何店舗も展開しつつイベント開催などにも力を入れながら利益をしっかり上げることができる大型チェーンではなく、資本の小ささを店主の個性でカバーしつつレコードやCDを店頭に並べる街の小さなレコード屋であったはずです(勿論、僕自身大手チェーンの存在自体を否定しませんし、よく利用もしています)。
一方で、今の日本のRSDの現状を見ると、参加店舗には大手チェーンが目立ち、それらの店に集中して限定レコードが入荷され(タイトル数も枚数も)、それらレコードを求めて多くの人が大手チェーンを中心に足を運ぶという事態が発生しています。

レコード好きのみなさんの中にはきっと贔屓にしている街のレコ屋があるはずです。僕にもあります。RSD当日、よく足を運んでレコードを買っている原宿のHi-Fi Recordsは通常営業を行っているだけでしたし、下北沢のWEEKEND RECORSは「本日はRecord Store Dayなのでお休みします」との張り紙を貼ってシャッターを下ろしていました。昨年触れた高円寺や西荻窪のお店たちは今年も参加していません。
これには色々と事情があるのかもしれませんし、様々な思いがあるのかもしれません。ただ、こういう街のレコ屋が積極的に参加し、こういう場所にこそ限定版が集まり、それを求めて人がやってくるという構図が本来のRSDなのではないでしょうか。こういじょう状況が生まれていかなければ、RSDは大手が「レコード」という商品で利益をあげる日になってしまう時がいつかくるかもしれません。RSDは街のレコード屋を足を運んで盛り上げる日であり、限定レコードは目的実現のための手段です。それが目的化しつつある現状が押し進んでしまうことには不安を感じます。

目的達成のための手段を増やす、ということも1つの手なのかもしれません。RSD当日に大物アーティストが街のレコ屋でサプライズライブを行う。アメリカでは毎年行われている光景ですが日本ではまだまだ一般的な光景にはなっていないようです。

もちろん、日本でもRSD当日にDJイベントやトークイベント等開かれてはいます。ただ、Foo Fightersのようなスタジアム級のアーティストが小さなレコ屋の店頭でライブをするなんていう状況はまだ生まれてきていません。街の小さなレコ屋でアジカンやBAWIDIESといった武道館クラスのアーティストがサプライズライブを行うような状況が各地で行われるようになれば、それを見に人が集まり、結果としてレコ屋の面白さに気が付けるきっかけを生むことができるかもしれません。

色々と書いてきましたが、RSDはとても良いイベントだと思うんです。みんながレコード屋をめぐりながら情報交換をして楽しむ1日は、音楽好きにはとても幸せな光景に見えます。だからこそ、毎年毎年課題を見つけ解決し、「街のレコード屋の魅力を伝える」という本来の趣旨実現を最大化できるようになっていってくれればと思います。そして僕自身、ただ問題を指摘するだけでなく、具体的になにか役に立つことができないかなぁと思い始めているところでもあります。日本で始まり、来年で5年目を迎えるRSD、今後も注目していきます。