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Ai_Tkgk's Soliloquy

音楽やカルチャーについて、気になることを気ままに書いています。

レコード福袋から考える「レコメンド」の重要性

考察・コラム
FLAKE RECORDSの福袋を買ってみた 去年、クリスマスプレゼントに念願のレコードプレーヤーを貰って以来、週2枚くらいのペースでレコードを買いまくってます。レコードの音の温かさもさることながら、レコード屋で好きなレコードをDigる(探す)行為が楽しくて楽しくてしょうがないんですよね。(これきっかけでレコードについて調べていたら、近年におけるアメリカを中心としたレコード復権が興味深かったので、このことについては近々別エントリーで書くつもりです) で、そんな中、年明けに大阪のレコード屋「FLAKE RECORDS」の名物店長・ダワさんがこんなツイートをしているのを目にしました。 これは、「○○(アーティスト名)っぽいバンド」みたいなリクエストはできるものの、基本的には値段に応じた枚数のレコード(もしくはCD)を“店長がセレクトして”送ってくれるというもの。どんなものが来るのか興味もあったので、「Vampire WeekendみたいなUSインディーもの」というリクエストをつけて、5,000円コース(12 inch×5枚)を頼んでみました。 一週間後、届いた5枚がこちら。 レコード.jpgWHITE RABBITS / It's Frightening [12 inch Analog] NODZZZ / Innings [12 inch Analog] GOLDEN TRIANGLE / Double Jointer [12 inch Analog] Young Rival / YOUNG RIVAL [Analog] DISTRACTIONS / Dark Green Sea [12 inch Analog] いずれも聴いたことがないバンドにも関わらず、どれもこれも何廻しもしたいくらい素晴らしい! FLAKE RECORDSの福袋は期待以上の内容でした(来年も買います!) でも、¥5,000って決して安くはないですよね。洋楽輸入盤なら “自分の好きな”アルバムを新品なら3枚、中古なら5枚くらい買えちゃう金額じゃないですか。「届くまで何が来るかわからないものをなんで買ったの?好きなもの買えばいいじゃん!」って友人から言われたりもしたんです。「いや、それが福袋でしょ!」って言ったら元も子もないので(笑)、なぜレコード福袋を買おうと思ったのかを考えてみました。 FLAKE RECORDSのオススメだからこそ 音楽好きの人の多くは「自分が好きなジャンル・テイスト」で「まだ出会っていない」音楽を常に求めていると思うので(勿論、僕も)、今回の福袋購入は「目的実現のための手段」という関係性になります。 じゃあなぜ、その手段を選んだのかって話です。 それは「FLAKE RECDORDSとダワさん(店長)に対する信頼」が大きかったってことなんです。 僕の中で、FLAKE RECORDSそして店長のダワさんは、メジャー/インディー問わず様々な国内ミュージシャンとの交流があることに加え、洋楽に対する強い想いと深い造詣を有しているというイメージがあります。店舗に足を運んでみると店内商品の8~9割くらいがオルタナやUSインディーを中心とした洋楽ですし、その中には日本ではまだまだ知られていないこだわりのアーティストの作品も置いてあったりして“洋楽に強い”お店であることが実感できるんです。僕は、いわゆるUSインディー系のミュージシャンが結構好きなんですが、これまでFLAKEがPUSHしていたミュージシャンたちは大体ストライクど真ん中だったという経験もありました。 ゆえに、僕の中で「洋楽、特にUSインディーに強いFLAKE RECORDS」と「そのFLAKE RECORDSが薦めるミュージシャンなら当たりの可能性が高い」という信頼が成り立ったので、その信頼にお金を出してみようと思ったわけです。還元すれば、「信頼できるモノからのレコメンド」に対する投資チャレンジと言う感じでしょうか。 残響ショップのブラインド販売について考えてみる で、実際こういうシステムが成功しているケースが出てきています。 Drillspin Column第34回:店頭のCDを見せずに聴かせたら売上が4倍に伸びた!~CDの売上が急上昇した小売店の実例~ 残響ショップのブラインド販売、結構話題になってますよね。アーティスト情報の一切を隠した状態でお客さんに音源を視聴をしてもらい、購入した人だけにアーティストの詳細を教えるっていうシステム、とても面白いと思います。もちろん、この販売方法自体もとても面白いんです。ただ、この販売法、そもそも全く情報が分からないアーティストの音源を聴いてもらうという割と大きなハードルがありますよね。このハードル超えさせる成功の陰には、「残響であること」も少なからず影響していると思うんです。 残響ショップの運営母体である残響レコードに所属するアーティストは、いわゆる「残響系」というような括りで呼ばれたりしています。それは、9mmやcinema staff、teをはじめとするよ「轟音」「激しいパフォーマンス」がキーワードになっているアーティスト達です。残響レコードに所属するアーティスト達は、その核の部分に強い共通性があるように見受けられます。つまり、残響レコードには、レーベル独自のカラーがあって、音源がリリースされるアーティストは、その音源を聴く前からアーティストの持つ世界観がある程度想像できるわけです(これが残響系)。いわば、残響レコードはレーベルそれ自体が信頼に値する「ブランド力」を持っているって訳です。社長の河野氏は著書「音楽ビジネス革命」で「残響レコードは“レーベル買い”ができるレーベルを目指している」と書いていますが、レーベルカラーの独自性ゆえ「残響所属なら買ってみる」というファンがついている日本では数少ないレーベルだと思います。 残響ショップを訪れる人の多くは、多かれ少なかれ「残響系」のイメージを自分なりに持ち、そのイメージに好意を抱いていると思うんです。「残響ショップが選んで並べているアーティストなのだから、たとえ情報が分からなくても聴いてみたらハマる筈だ!」という動機が生まれ、ヘッドフォンを耳に当てるところまでいくお客さんも多い筈です。これも信頼できるモノ(レーベル)からのレコメンドに対する信頼がなす技ではないでしょうか。 で、この「レコメンド」調べてみると、海外では、少しずつとはいえムーブメントが来ているようなんです。 [海外] 英老舗レコ屋「Rough Trade」がThe Guardian紙と提携し、サブスクリプション型音楽サービスを開始 UKロック好きならその名を知らぬ者はいない、と言われる伝説的なレーベル「Rough Trade(以下、RT)」。The Smith、The LibertinesThe Strokes、、、とこのレーベルが発掘し世に出してきたバンドの名前を挙げたらキリがありません。そんなRTが英国紙The Guardianと始めた「Tracks Of The Week」は、週額500円程度で毎週金曜にRTがオススメする楽曲がMP3形式で6曲送られてくるというものです。 ホワイト・ストライプス、サード・マン・レコード会員のみにライブ盤やライブDVDなどをリリース 00年代前半に欧米で起こったガレージロックリバイバルの最重要バンドの1つThe White Stripesのフロントマン・Jack Whiteが主催するレーベル兼レコードショップ「Third Man Records(以下、TMR)」が始めているサービスが「the vault」。これは3ヶ月単位(7,000円程度)で登録するTMRのファンクラブ。登録した会員には3ヶ月毎にTMR所属アーティストのレアもの音源が送られてくるというもの。過去にはストライプスの未発表音源やシークレットライブのLPも送られてきたとか。 いずれも手元に届くまでなにがくるのか分からない。ただただ相手のレコメンドを信じるのみ。つまり、レコードショップなりレーベルなりに対する信頼の上に成り立っているサービスだと言えます。 これからは「レコメンド」が重要になってくる気がする 2012年の夏、音楽ジャーナリストの鹿野淳氏が主催する音楽ジャーナリスト養成講座「音小屋」に参加し、5〜10歳くらい年が離れた音楽好き達と話をする機会がぐっと増えました。 彼らの世代は、高校生の頃からYouTubeニコニコ動画が当たり前に存在し、気になったアーティストの曲はすぐにでも検索して聴けてしまう環境にあります。また、webやSNSも発展していることから、様々な情報を瞬時に手に入れる事ができる。レコードショップに一生懸命通って仲良くなった先輩にCDを借りたりおすすめを教えてもらったり、まだ見ぬアーティスト(特に洋楽アーティスト)の動く姿を想像しながら音源を聴いていた、音楽に対する入り口がとても限定されていた僕の世代からすると本当にうらやましい限りです。 ただ、彼らと知り合って感じたのは、僕が思っている程新しい音楽に対してアプローチをしている人が少ないという事です。そして彼らが揃って口にするのは「入り口が広すぎてなにから聴き始めれば、どのように広げていけばいいのか分からない」ということでした。音楽に触れる事ができるインフラが整備されすぎてしまったせいで、逆にどのように出会いを見つけていけばいいのか分からない、という状況が起きてしまっていたという事です。だからこそ、これからは情報の海を泳ぐための灯台として、各々が「信頼できるモノ(レーベル、お店、人)からの“レコメンド”」が重要性を帯びてくるのではないか、なんていう考えがふつふつと湧いてきた訳です。2014年はこの「レコメンド」について、色々な角度で考えていきたいと思っています。